≪IFA2014レポート≫サムスンの洗濯機の感心の先進技術ととまどう表記。


サムスンの洗濯機は今回、WW9000という評判のモデルを展示していました。しかし、ちょっと違和感を覚えたことがありました。

■シンプルながらも・・・
今回目玉のサムスンの洗濯機。WW9000。看板には「Big Opening. Big Changes.」とあります。
聞いてみると、「扉を大きくしたんだ。ほら、今まで入れにくかった毛布も入るだろ!」と言われてしまいました。実際、180°近く開き、大きな開口部はとても便利。サムスンは、今回「ブルー」がテーマカラーになっているようですが、水まわりの製品が白と青で構成されているのは、キレイだし気分もイイ・・・。

左:キャッチコピー。右:170°も開く大きな扉。ブルーカラーで高級さも演出。

左:キャッチコピー。右:170°も開く大きな扉。ブルーカラーで高級さも演出。

■”Big Changes”の意味
でも、それはBig Changesではないですよね。この洗濯機よく見てください。表に、ボタンは2つ(「スタート」と「一時停止」)しかないのです。そして大型の液晶パネル。そしてサムスンといえば、スマートフォン「GALAXY」。何となく想像つきましたか?実は、2014年3月に発売されたこの洗濯機「WW9000」は、いろいろなところで高評価を受けているのです。
IFAでは、”TECHNIK-TRENDS”(技術トレンド)というパンフレットを無料で配布しています。そこにも掲載されています。英国の情報技術(IT)専門誌の評価で満点が付けられたし、アメリカの電子機器専門の購入ガイド誌『エキスパートレビュー』は、5つ星の満点をつけ、「(Recommended)おすすめ製品」に選んだそうです。

左:『TECHNIK-TRENDS』の表紙。右:洗濯機のページ。サムスンはもっとも目立つ扱い。

左:『TECHNIK-TRENDS』の表紙。右:洗濯機のページ。サムスンはもっとも目立つ扱い。

説明員によると、衣類の種類、重さ、汚れ具合を、センサーで判断。最も適切な洗剤量を決め投入し、あとは全自動なのだそうです。洗濯で面倒なことは、汚れ物自体を仕分け、それぞれ適切な洗い方をセットしてやることです。まず、素材により、洗うことによるダメージが異なりますし、使える洗剤も異なります。また、汗の汚れなのか、泥汚れなのかでも、違います。これを全て「自動」でというのですから、スゴい製品です。
中央部にある5インチタッチパネル液晶の操作部は、センサーが読み取った状況を逐一表示します。写真が上手く撮れなかったので、サムスンUKのホームページにあったタッチスクリーンの写真を転載します。

やんちゃな子供の服と判断。水温を40℃、すすぎを4回、1200回転の洗濯で3時間14分かかることがわかる。

やんちゃな子供の服と判断。水温を40℃、すすぎを4回、1200回転の洗濯で3時間14分かかることがわかる。

しかもスマホからも、操作ができる優れもの! というわけです。タッチパネルは、作り手側のインフォメーションがうまくないとイイ感じに仕上がりません。うまいデザイナーが作ると、何も聞かなくても最後まで辿り着くのですが、下手だとたどり着けないことも。ヘルプ画面がほしくなります。
日常使うアプリで、ヘルプ画面を多用しなければならないアプリもありますが、サムソンの画面は必要十分な情報が掲載されており、よく洗濯を理解している人が作ったと思われます。
ただ、洗濯は「服をキレイにしてナンボ」ですので、自分で使って得心しない限り、これ以上のコメントはできません。
それとスマート家電で、言われるスマートフォンでの外からの操作ですが、これも色々な条件が付いたりするので、実は問題がある場合が多い。真のオープンプラットフォームで、あらゆるスマートフォンから対応できるようにしてほしいものです。ちなみに、外出から戻り30分後に洗い上がると、干しに丁度イイなどとアドバイスされますので、外出先からのコントロールを否定しているわけではありません。

■Air Washの意味
次に展示してあったのは、サムスンの売れ筋モデルです。タイトルは「Wash Cool. Save Energy. 」その前に冠技術として、「eco bubble Technology」とあります。単純にいえば泡洗いです。細かい泡を大量に作り、汚れモノに対する接触面積、回数を多くし、均一に洗うのは手で洗っていた時からある技術です。効率よく汚れを落とすには普遍的な技術といえます。新しい技術というより、「再認識の技術」と言った方がイイでしょうか?国内メーカーでも多くのメーカーがアピールする、しないに関わらず、使っている技術です。

左:キャッチコピー。右:ECO-BUBBLEのイメージモデル。洗剤と水、そして空気を混ぜて泡をつくる。

左:キャッチコピー。右:ECO-BUBBLEのイメージモデル。洗剤と水、そして空気を混ぜて泡をつくる。

こちらは置いておくとして、私がとまどったのは、洗濯機にあった「AIR Wash」の表記です。聞いてみると、スチームで洗いますとのこと。洗剤を使わないので、「AIR Wash」と目立つように書きましたと。スチーム(蒸気)は汚れを浮かせる機能があり、上手く使うと洗剤なしで汚れを落とすことも可能です。が、これも古くから使われている技法洗で、通常「Steam Wash」といわれ、「Steam」が冠されます。AIR Washといわれたら何が何だか分かりません。

黄色で囲んだ部分に「Air Wash」とある。

黄色で囲んだ部分に「Air Wash」とある。

日本で販売されているハイアールAQUAのドラム式洗濯機には、「オゾン」を使って洗う特殊機能「エア ウォッシュ」が付いています。オゾンにより有機物を分解できる特性を利用した、水をまったく使わない洗濯法です。効果はスゴいモノがありまして、別途レポートしますが、夏場汗まみれになったスーツでも、20分でクリーニング同等の状態になります。で、ハイアールAQUAは、オゾンだと、すぐに分かってもらえない可能性がある。「気体」で洗っているという意味で「エア」を使っていますとのことでした。こちらは全く別物ですからね。気持ちはよく分かります。しかし、ウォークマンのように、造語であることをわかるようにしてほしいことも事実です。「Airwash」のようにつなぐ方法も含め、検討してもらえないものかなぁ・・・。
何故、こんな些細なことまで書くかといいますと、新しい技術は皆さんが思うほど生まれてこないからです。WW9000の自動制御技術。人が判断することがまったくないのなら、それはスゴいことです。「究極の」洗濯機と言っても過言ではない。が、そこまで完全ではないにせよ、一歩でも理想型に進んでいるのは事実です。これは拍手したいし、是非、日本でも出してほしい。
しかし、今回の「AIR Wash」という表記はどうかと思います。これは「特殊に見せようという仕掛け」だと思います。問題は、「仕組みが想像できない」ことです。これはイメージが重要なイメージネーミングではなく、使い方の部分に記載してある技術ネーミングとしては非常に問題ある使い方だと思います。
AQUAの場合は、仕組みが特殊ですから、むしろ引っ掛かった方がイイのです。高濃度のオゾンは健康に問題があるのです。万全の対応策は施されていますが、一番の対応策は「ユーザーに認識してもらうこと」です。
サムスンは、大メーカーです。大メーカーだからこそ、してはならないことがあると思います。それは「人を誤った認識に導かない」こと。本体にスイッチが2つしかない先進性と、自分を特別だと言い張る後進性。二面性を見る思いでした。(多賀一晃)

2014年09月16日(火曜日)